「掃除をお願いしても、なかなか動いてくれない」
「昔は当たり前だったことが、今は通じない」
「若い世代との価値観の違いに戸惑うことがある」
50代で管理職をしていると、こんな場面に出会うことはないでしょうか。
私も以前は、若い部下の行動を見て「なぜ掃除をしないのだろう?」と疑問に思っていました。
ただ、今振り返ってみると、これは単純に「掃除をする・しない」という話ではなかったのだと思います。
自分が当たり前だと思っていた仕事の進め方と、部下が考えていた仕事の進め方。その違いが、たまたま「掃除」という小さな出来事をきっかけに表れただけだったのです。
私は製造業で働く50代の会社員で、現在は課長として管理職をしています。部署には5人の部下がおり、その中にはいわゆるZ世代と呼ばれる若い社員もいます。
彼らは真面目に仕事に取り組んでいますし、責任感を持って仕事をしている場面もたくさんあります。一方で、私が若い頃には考えもしなかったような価値観に出会い、「そういう考え方もあるのか」と驚かされることもあります。
今回紹介するのは、その中でも特に印象に残っている「掃除」をめぐる出来事です。
最初は「なぜやらないの?」と思っていた私が、部下と話すことで少し考え方を変えるようになった話です。
私にとって、職場の掃除は「仕事の一部」だった
私が社会人になった頃、職場では掃除をすることが当たり前でした。
始業前になると、それぞれが担当場所を掃除します。机の周りを整えたり、作業場をきれいにしたりすることも、特別な仕事だとは考えていませんでした。
誰かから細かく指示されなくても、時間になれば自然と掃除を始める。周囲が動き始めれば、自分も動く。
今思えば、当時の職場には「みんなで職場を整える」という空気があったのだと思います。
もちろん、掃除をしたからといって給料が増えるわけではありません。評価されるために掃除をしていたわけでもありません。
それでも、「職場を使う以上、きれいにするのは当然」という感覚が自分の中にはありました。
また、私自身は「言われなくても周りを見て動く」ことを、社会人として大切な姿勢だと考えてきました。
手が空いているなら次の仕事を探す。誰かが困っていれば声をかける。汚れている場所があれば、気づいた人が片付ける。
こうした行動を自然にできることが、仕事のできる社員につながると考えていたのです。
だからこそ、後になって部下との間に小さなズレがあることに気づくことになります。
「掃除って必ずやるものなんですか?」と言われた日
ある日のことです。
始業前の時間になりました。
私はいつものように、自分の担当場所を掃除していました。
ところが、周囲を見渡してみると、若い部下たちは掃除を始める様子がありません。
最初は「まだ始めていないのかな」くらいに思っていました。
しかし、しばらくしても状況は変わりません。
そこで私は、部下に掃除について話してみました。

「課長、掃除って必ずやるものなんですか?」

「え?いや……担当場所は決まっているけど……」

「仕事の指示としては聞いていないので……」
その言葉を聞いたとき、私は正直、少し驚きました。
私の中では、「掃除をする」ということは説明するまでもないことだったからです。
ところが、部下からすると「業務として明確に決められていることなのか」という確認が必要だったのかもしれません。
そこで私は、少し冷静になって考えてみました。
「もしかすると、掃除をしないのではなく、私とは違う基準で仕事を考えているのではないか?」
そう考えると、見え方が少し変わってきました。
「掃除をしない」のではなく、「仕事として決まっているのか」を考えていた
ここは、今回の出来事で私が一番考えさせられた部分です。
私は当初、「掃除をしない=自分から動こうとしない」と受け止めていました。
しかし、部下と話してみると、必ずしもそうとは限りません。
「これは誰が担当する仕事なのか」
「会社のルールとして決まっているのか」
「業務時間に行う仕事なのか」
「自分の役割に含まれているのか」
こうした点を確認したうえで行動したいと考えている可能性があります。
これは、私たちが若い頃に身につけてきた仕事の進め方とは違う部分です。
もちろん、すべての若い社員が同じ考え方をしているわけではありません。世代だけで人の行動を決めつけることもできません。
ただ、目の前の部下がそう考えているのであれば、まずは「なぜそう考えるのか」を聞いてみることが大切なのだと感じました。
「言わなくても分かる」は、本当に伝わっているのか
今回の出来事をきっかけに、私は自分の指示の出し方についても考えるようになりました。
私たち50代の管理職は、「これくらいは分かるだろう」と思ってしまうことがあります。
例えば、
- 職場が汚れていたら掃除する
- 手が空いたら次の仕事を探す
- 困っている人がいたら声をかける
- 忙しい人がいれば手伝う
私にとっては、こうした行動は「仕事をするうえで自然なこと」でした。
しかし、部下からすれば、「そこまで言われていない」と感じることもあります。
ここで重要なのは、どちらが正しいかを決めることではありません。
「自分にとっての当たり前が、相手にとっても当たり前とは限らない」
このことを、私は掃除という小さな出来事から学びました。
実際、部下との価値観の違いは掃除だけではありません。
以前、私は若手社員とのやり取りの中で、「それはパワハラです」と言われた経験もありました。
そのときにも、自分が普通だと思っていた指導方法と、相手が受け取った印象には大きな違いがあることを感じました。
その経験については、【第3回】「それパワハラです」と言われた日|怒れなくなった管理職のリアルでも書いています。
「もっと自分から動いてほしい」と思う前に
管理職をしていると、若手社員に対して「もう少し自分から動いてくれればいいのに」と思うことがあります。
私もそうでした。
掃除の場面だけでなく、仕事の中でも「指示を待っているように見える」と感じることがあります。
以前の私は、そんな姿を見ると「なぜ自分から動かないのだろう」と考えていました。
ところが、話を聞いてみると、
- 間違った判断をして怒られたくない
- 自分で判断して責任を負うことが不安
- どこまで自分で判断していいのか分からない
- 勝手にやってはいけないと思っている
というケースもあります。
つまり、こちらから見ると「指示待ち」に見えていても、本人からすると「勝手に判断しないようにしている」だけなのかもしれません。
この違いについては、【第6回】「指示待ちなのか?」と感じた私が気づいたZ世代の仕事観で、もう少し詳しく書いています。
管理職としては、「もっと自分から動け」と言うだけではなく、「どこまで自分で判断していいのか」を伝えることも必要なのかもしれません。
掃除をきっかけに、私が変えたこと
では、その後どうしたのか。
私は「掃除くらい言われなくてもやってほしい」と思う気持ちをいったん横に置き、掃除について具体的に話すことにしました。
「担当場所はここです」
「始業前にこの時間を使って掃除します」
「みんなが気持ちよく仕事を始めるためにやっています」
というように、目的や担当をできるだけ分かりやすく伝えるようにしました。
すると、自分の中にも変化がありました。
今までの私は、「なぜ分からないのだろう」と考えていました。
しかし、「相手に伝わるように説明できていただろうか」と考えるようになったのです。
これは管理職として、意外と大きな変化でした。
「昔はこうだった」だけでは部下は動かない
50代になると、これまでの仕事経験が増えています。
その経験は、管理職として大きな強みです。
一方で、過去の成功体験に引っ張られすぎると、今の職場との間にズレが生まれることもあります。
「俺たちの頃はこうだった」
「昔は言われなくてもやった」
「それくらい常識だろう」
私自身も、そう思ってしまうことがあります。
でも、それをそのまま部下に求めても、必ずしも伝わるとは限りません。
大切なのは、過去のやり方を全部捨てることでも、若い世代の考え方にすべて合わせることでもないと思います。
「なぜ自分はそう考えるのか」を説明し、「相手はどう考えているのか」を聞く。
その間に、ちょうどいい落としどころを探す。
私は最近、そんな意識を持つようになりました。
掃除だけではなかった、世代間の価値観の違い
今回の出来事を振り返ってみると、掃除そのものが問題だったわけではありません。
仕事に対する考え方の違いが、掃除という身近な行動を通して見えただけなのだと思います。
例えば、飲み会についても、以前の私は「職場の人間関係を作るためには参加するもの」と考えていました。
ところが、若い社員と話してみると、仕事とプライベートを分けたいという考え方もあります。
この経験については、【第4回】「飲み会も仕事でしょ?」と思っていた私が知ったZ世代の本音で紹介しています。
残業についても同じです。
私が若い頃は、仕事が終わっていなくても周囲が残っていれば「もう少しやろう」と考えることがありました。
しかし、現在では決められた時間の中で仕事を終わらせることを重視する社員もいます。
その違いについては、【第5回】「もう帰ります」残業しない若手に違和感を覚えた私が知った本音でも書いています。
掃除、飲み会、残業。
一つひとつは小さな出来事です。
しかし、その小さな出来事の中に、「仕事とは何か」「会社とは何か」「自分の役割とは何か」という考え方の違いが表れるのかもしれません。
「なぜやるのか」を伝えるようになった
掃除の件があってから、私は若手社員に何かをお願いするとき、できるだけ「なぜやるのか」も伝えるようになりました。
例えば、単に「ここを掃除して」と言うのではなく、
「この場所はみんなが使うから、始業前にきれいにしておこう」
「作業場が整理されていると、仕事もしやすくなるからお願いしたい」
というように、目的を添えるようにしています。
もちろん、毎回うまくいくわけではありません。
「そんなに丁寧に説明しないといけないの?」と思うこともあります。
正直、面倒に感じる日もあります。
それでも、説明を省いたことで後から「そんな話は聞いていません」となるよりは、最初に認識を合わせておいたほうが、お互いに仕事がしやすいこともあります。
これは掃除に限った話ではありません。
部下への指示や仕事の教え方でも、同じことが言えるのではないでしょうか。
世代が違えば「当たり前」も違う
今回の出来事を経験して、私は「Z世代は掃除をしない」と一括りに考えるのは違うと思うようになりました。
実際、私の職場でも若い社員が自主的に動いてくれることはあります。
問題なのは、年齢ではなく、「何を自分の仕事だと認識しているか」「どこまで自分で判断していいと思っているか」という部分なのかもしれません。
そして、その認識が管理職と部下で違っているなら、まずは話をする必要があります。
「なんでやらないの?」と責める前に、
「あなたは、この仕事をどう考えている?」
と聞いてみる。
たったそれだけでも、相手の考えが見えてくることがあります。
もちろん、すべてを相手に合わせる必要はありません。
会社として守るべきルールや、安全面で絶対に守らなければならないこともあります。
管理職として必要なのは、「昔のやり方を押しつけること」でも「若い社員の言うことを全部受け入れること」でもなく、必要なルールを明確にしたうえで、お互いに納得できる方法を探すことなのだと思います。
50代管理職だからこそできること
私は50代になり、これまで多くの仕事を経験してきました。
失敗したこともありますし、部下との接し方で後悔したこともあります。
だからこそ、若い社員に「自分が若かった頃と同じように働いてほしい」と考えるよりも、自分の経験をどう伝えるかを考えるようになりました。
経験そのものは、若い社員にはありません。
だからといって、「経験がないから分からない」と決めつけるのではなく、経験を伝えながら、一緒に考えていく。
それが50代の管理職にできる役割の一つなのかもしれません。
今回の掃除の出来事も、最初は「なぜ掃除をしないの?」という疑問から始まりました。
でも、部下と話したことで、私は自分の「当たり前」を見直すきっかけをもらいました。
まとめ|「なぜやらない?」の前に「どう考えている?」
今回は、私が職場で経験した「掃除をめぐる世代間のギャップ」について書きました。
最初の私は、掃除をしない部下を見て、「どうして自分から動かないのだろう」と思っていました。
しかし、実際に話してみると、そこには仕事の範囲や役割に対する認識の違いがありました。
この経験から私が学んだのは、次の3つです。
- 自分の「当たり前」が、相手の「当たり前」とは限らない
- 「なぜやらない?」と責める前に、相手の考えを聞いてみる
- 仕事をお願いするときは、目的や役割をできるだけ具体的に伝える
掃除は小さな出来事です。
それでも、こうした小さな違和感をそのままにせず、「なぜそう考えるのだろう?」と一度立ち止まってみることで、部下との関係が少し変わることがあります。
私自身、今でも若い社員との価値観の違いに戸惑うことがあります。
「最近の若い人は分からないな」と思ってしまうことも、正直あります。
それでも、話してみると「そういう理由だったのか」と納得することもあります。
管理職として完璧な答えがあるわけではありません。
だからこそ、これからも部下との日々のやり取りから、自分自身も学んでいきたいと思っています。
もしあなたも職場で「なぜ、こんなことをしないのだろう?」と感じることがあるなら、まずは一度、本人に聞いてみてはいかがでしょうか。
もしかすると、そこには私が掃除の件で経験したような、ちょっとした認識の違いが隠れているかもしれません。
関連記事
- 【第1回】部下がZ世代だった話|昭和課長がブログを始めた理由
- 【第3回】「それパワハラです」と言われた日|怒れなくなった管理職のリアル
- 【第4回】「飲み会も仕事でしょ?」と思っていた私が知ったZ世代の本音
- 【第5回】「もう帰ります」残業しない若手に違和感を覚えた私が知った本音
- 【第6回】「指示待ちなのか?」と感じた私が気づいたZ世代の仕事観
- 【第53回】Z世代との接し方完全ガイド|50代管理職が実体験から学んだ考え方と伝え方
Z世代とのコミュニケーションや信頼関係づくり、世代間ギャップへの向き合い方をテーマ別にまとめています。 - 【第54回】若手社員の育て方完全ガイド|50代管理職が実体験から学んだ部下育成の考え方
若手社員の育成方法や指導のポイント、管理職としての考え方を実体験をもとに解説しています。
※本記事は、筆者自身の職場での経験をもとに、一部内容を再構成しています。特定の個人や企業が特定されないよう、一部の状況や表現を変更しています。
※「Z世代」という言葉は、若い世代を一括りにして評価することを目的としたものではありません。本記事では、筆者が実際の職場で感じた価値観の違いについて、自身の経験をもとに紹介しています。
※本記事内の画像には、AI(ChatGPT / DALL·E)およびCanvaによって作成したものを含みます。使用している素材については、各サービスの利用規約およびライセンス条件を確認したうえでブログに掲載しています。


コメント